SIerの中には業務委託としてシステムの運用保守を行っているところがある。
まぁいろんなシステムを運用保守するんだけど中には24時間365日動くシステムなんてものもある。
個人的には死ぬまで働けますか?みたいな前時代のキャッチフレーズを彷彿とさせるおぞましい言葉だと思う。
そんな仕事も一時経験したことがあるのでそれについて書いてみようかと。
運用保守とは
まず運用保守ってなんぞやという話から。
これはとあるユーザが家電とか買った後に、壊れたり「なんか動かない・・・」といったケースを想像してもらうと分かりやすいかも。
この時、メーカーに問い合わせたり修理依頼とかすると思うんだけど、
実際に問い合わせに答えたり修理したりするメーカー側の業務のことを運用保守と言います。
(ユーザサポートとかメンテナンスとか言い方は違えど広義には上記のような業務を指します。)
システムの運用保守もまぁある意味似ている。
例えば某旅行サイトとか通販サイトとかイメージしてもらったら分かりやすい。
「商品をかごに入れる」ボタンをクリックしたのに、
- かごに商品が入ってない
- ボタン押したらBad Requestとか書いてるページが表示された
等の動作を起こしてしまったら、システム資産を持つ会社からしたらユーザへのサービスが満足に提供できないわけで、
収益などにも影響する。
こうした障害対応も運用保守の仕事の1つ。
他にも
- 画面レイアウトの見直し
- 新しい機能を追加する等の改修(メンテナンス)対応
もなんかも運用保守の仕事。
とにかく今存在するシステムを支障なく、ユーザの皆様に円滑に利用頂くための業務だと思っていただければ。
運用保守の大変さ
でまぁ仕事ってどれも大変かもしれないけど、運用保守の大変さについて。
まず、対象システムを理解していないと何もできないということ。
これは、システムの内部ロジックとかはIT屋なら当然として、
- 何故その機能が存在するのか、目的や背景の理解
- 何故こんなレイアウトになっているのか、ユーザビリティの考え方
- システムで実現したいこと、システム資産を保持しているユーザの目的は何か
- 関連システムがあればインタフェースや、システム停止時の影響と規模
等々を理解する必要があるんだけど、
システムの新規構築と比較すると学習のオーバーヘッドがかかる。
また、満足に仕様書が残されていなかったりするとソースコードからリバースエンジニアリングしないといけない。最悪。
システム資産を持つ会社の担当者も単一のシステム張り付きでないことも多く、なおさら学習が大変だったりする。
(そもそもお客さんに教えてもらうってこともほぼないわけだけど。)
学習のオーバーヘッドがかかるってことはリスクでもあって、
いやマジでなんでその機能いるの?意味あるの?どうやってやるの?ってご要望が来た時、その疑問もユーザ側が責任もって説明してくれたらいいんだけど、
言われたことをやれ。仕様はお前らが考えろ。来月から使いたいからあとよろしく!
ってふわっとした依頼で仕様作成して機能開発する日本のITの商習慣だと、後々の開発責任も押し付けられる形になるのでこれ致命傷になる。
変な機能作ると後々不具合が起きたり、利用上の問題が多数出てきた時、今度は逆にその機能を削除するという素敵なお仕事が待っているからね。。
1個機能リリースするのだって
- 機能仕様考えて
- 他システムとの関連や影響を調べて
- その仕様がどれだけのメリットを産むのか、投資回収性はどれだけか判断して
- 開発して
- テストして
- テスト結果を顧客と共有して
- リリースの許可を得て
- 機能リリースして
- リリースした後も機能がちゃんと動いているか監視して
・・って考えると割と仕事あるもんなんです。
一応お客様の資産であるシステムを修正するわけなのでお伺い等も大変だったり。
他、顧客のITリテラシーが低かったり筋が悪かったりする場合は最悪な業務だと思う。
(使い方間違えてるだけなのに)「ボタン押したけど動かん」とか、
システム問い合わせをITなんでも窓口と勘違いしてるのか「プリンターが動かん」とか
そういう問い合わせも飛んでくるらしい。(これは友人の会社の話だけど)
ちなみにプリンター動かないのはコンセント抜けてただけらしい。
こんなんで時間取られてたらやってらんねぇよと思いましたね。
メリット
上記の大変さのところにも書いたけど、請け負う業務の範囲が広い分、
顧客側の課題も得られやすいし、相談も受けやすいので運用保守から企画といったコンサルティング領域に食い込んでいきやすい。
また、業務によってはほぼルーチンワーク化できるものも多い。(これは運用の範疇かな)
こうした仕事はマニュアル作成や自動化によって生産性を高めやすい。
営業戦略として、奴隷労働大好きなこの国の習慣上、運用保守まで面倒見させて頂きます!ってのはありかも。
「365日24時間連続稼働」とか「ミッションクリティカル」はヤバい
で、本題でございます。
この言葉が意味するところは「基本的にシステムが止まりません」ということと同義。
システムが止まりかねない事象が発生した時や、不具合が起きて業務を続行できない等の問題が起きた時、
夜中だろうが休日だろうが即座に飛び起きてシステムを動かすために対応しなければならない。
周り見ても工場系の操業システム(フル生産時期の自動車、鉄鋼、材料系、プラント、電力)とかはこういうの多いかな。
特に最近3交代で運用要員割り当てられるほど人もいないので、大抵普通に常駐時間帯で働いてる人が兼任で呼び出し担当になってる場合もあったり。
自分も本務は企画だったりプロジェクト管理なんだけど、「人がいない」の名目で運用保守も開発もテストも全部やれとか言われたことがある。
- 夜中3:00とかに会社携帯がなってなんか機能が動かないからとか問い合わせ来たり(問い合わせ対応後も普通に勤務したり)
- 休日県外に旅行行ってる先で「今から会社来れる?」とか呼び出し要請受けたり(誰が行くかアホかと・・)
- 夜中寝てて電話出れなかった先輩が始末書書かされてたり
プライベートって何ですかそれって状況に追い込まれて本当嫌になった。
その時いた部署は「休日無断で会社から1時間以上離れた場所には行ってはいけない」とかいう暗黙のルールがあることを全く知らず。
マジで奴隷かよって感じ。
しかも入社時に運用保守やってもらうよとかそういう説明等は一切ない。
「みんな大変だから」とか「人がいないから」とかいう理由でなぁなぁで仕事の範囲だけ増やされて給料も特に増えるわけではなく・・
って業務範囲が曖昧なまま雇用契約を結ばされる日本企業の悪しき伝統と運用保守の負荷の高さの相乗効果も半端ないように思います。
専任で交代制でやるのならいいかもね。
おわりに
もしこれからSIer入ろうとしている人がいるなら
- もし入るならせめて運用保守専任の会社(部署)にしましょう
- 24H365D、ミッションクリティカルのシステムの運用保守は覚悟しましょう
- 企画も開発も運用保守もやってる会社(部署)には注意しましょう
ってとこがアドバイスになれば。
ちなみに会社の事業内容については大体webサイトで公開されてる。
「運用保守」とか「サポート」とか「維持」って表現が多いかな。
会社概要|伊藤忠テクノソリューションズ
事業内容 | SCSK株式会社
ただ、SIerのランキング上位に来るような会社だと大体運用保守やっちゃってるんだよね。。
その場合事業部ごとに運用保守の有無とか、どんなシステム作ってるか調べれば良いかも。
BtoCのシステム作ってるとこだと、システムが365日24時間使えるかどうか、定期メンテナンス時間がないかとかは調べやすいと思うので。
これから就職先を探すような人がネームバリューだけで会社選んでしまい、
配属先すら決めずに内定出しちゃうような会社に当たって、自分みたいに企画兼設計兼・・(略)・・運用保守担当とかならないよう、
事前に調べて希望を出すことで不幸な目に遭う確率を下げられるよう、この記事が一助となれば幸いです。