Take it easy.

えすあいあー



保険金なんて後でいいじゃないか

妻が亡くなる前入院中に、どうしても理解できなかったことがある。
今後なかなかこういう人間に出会うことはないだろうから記録に残しておこうと思った。


妻の危篤状態が看護師から告げられ、となりで看病している時だったと思う。

妻の母から1通の書類を渡された。


「診断書」「○○生命保険株式会社」と書いていた。


なんでも、学資保険をかけ続けておりその保険金の請求のために医師に書いてもらう必要がある書類だということだった。


何故この危篤のタイミングでそれを渡すのか?
保険金なんて、最悪の事態が起こってから後々時間が経ってからでも請求できるんじゃないか?
この人は何を考えているんだろうか?
あれ?嫁さんの親だよなこの人?


いろんな考えが頭を駆け巡った。
が、どうしても理解できなかった。
残酷な現実を直面できず、先々のことを考えていないと気がおかしくなるのかもしれないと。
そういうことなのかとギリギリ好意的に解釈しても、

「今じゃなくていいですよね」

とだけ言うのが精いっぱいだった。

そうしたら息を引き取った直後に渡してきやがった。

「忘れるといけないから」とか言って


本気でキレてやろうかと。だがこらえた。
あの場で自分が両親と喧嘩をすることを妻が望んでいたとは思えなかったからだ。


なんでこんなこと書こうかと思った理由がもう1つある。
手紙でぼちぼち書類を準備しておいてくれとか言ってきたからだ。

少し時間が経って冷静になったかと思った矢先にこれだ。
自分たちは夫婦で悲しめるからいいかもしれないがこっちは1人なんだ。
配慮もクソもない、自分たちのことしか考えていないとしか思えないこの行為はどうしても好意的に解釈することはできなかった。

そもそも自分でやればいいじゃん。そっちでかけた保険なんだし。


当時の真意を今更尋ねる気はしないし、両親と揉めるのも妻の本意ではないだろう。
だから今後最低限のやり取りに留めるつもりでいるが、これがいい歳いった人間の、ましてや故人の親のやることなんだろうか。

自分には何も分からなくなったし、何よりも余計に悲しくなってしまった。